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特集 インタビュー vol.5 東北大学経済学部 大滝精一教授インタビュー

東北大学 経済学部/大学院経済学研究科 大滝精一先生

 皆さんは、大学の授業とはどのようなものだと思いますか?白衣を着た先生が専門的な話をしているイメージでしょうか? 高校との違いって何でしょうか? そこで、大学での勉強や先生について、仙台育英学園高等学校特別進学コースの2年生6名が、東北大学経済学部の大滝精一教授にインタビューしてきました。


大学ではどのような勉強をするのですか?

インタビュー

 私は経済学部の教授ですが、高校生のみなさんにとって経済学や経営学という分野は、ほとんど勉強したことがない分野だと思います。そのため最初の1・2年生で入門的な内容を学習してから、より専門的な深い内容を3・4年生で学んでいきます。
  このように聞くと「高校とあまり変わらないなあ」と思うかもしれませんが、高校生までの学習と決定的に違うところがあります。それは、授業で教えられた内容や教科書を理解すれば十分というわけではなく、自分で疑問を解決していかないと、大学では勉強にならないということです。

 例えば、経済や経営を専門で学ぶといっても、「どうして景気がいい時期と悪い時期があるのだろう」とか、「『株で儲ける』というけど、株って何?」というように、興味や関心を持ったことを自分自身で調べて知っていかないと、授業でその入口は勉強できても、奥深い部分まではなかなかわからないのです。始めは、興味のあることを自分のできる範囲で調べるだけでもいいんですよ。その積み重ねや、ゼミと呼ばれる少人数での演習や実践、レポートなどを通じて、徐々に専門知識が本当の意味で身に付いていきますから。自分で疑問を解決したり、こうじゃないかという提案を行うという主体性が大学では必要なのです。理工系ですと実験器具や研究施設が必要な場合が多いのですが、会社で働くこととか物の値段とか、モデルとなる対象や情報が身近にたくさんあるということは、総合大学である本学経済学部の利点でしょうね。

大学での勉強を通じて、どのような人間になればいいのですか?

 大学で得たものを自分自身のためにだけではなく、他の人にも喜ばれるように役立てていくことができる人になって欲しいと考えています。
  そのために先ほどのような、問題解決型の勉強が大切になってくるのです。まずは自分で問題を発見したり、設定することから始まりますが、世の中にはいろいろな人や多様な出来事があるのですから、専門分野の知識だけではなく、幅広く物事を見つめる視野が必要です。それにはサークル活動や、他学部生や留学生との交流、インターンやアルバイトで社会経験を積むことも、勉強の一つになりますよね。それぞれ専門の学問を学びに通っているわけですから、最低限、社会に出てから通用する専門知識を身に付けて欲しいという気持ちはあります。しかし知識を覚えるだけではなく、それを問題を解決する手段に使ったり、自分が「こうではないのか」と考える仮説を検証していくために活用して、社会に還元していく人に成長して欲しいですね。

高校生のうちにした方が良いことはありますか?

高校生

 読書をして欲しいですね。学生と接していて一番思うことは、読んでいる本の幅が狭いということです。受験勉強も大変だと思いますが、小説や自然科学の本、新書などもすごくためになりますよ。
 本を読むと、世の中の流れを理解することができるのです。世の中の出来事は、単純に一つの原因から起きているわけではないということがわかってきます。例えば、フランス革命についての本を読めば、社会情勢や思想の流行など、様々な要因がフランス革命を引き起こしたことがわかると思います。受験勉強の答えは一つかもしれませんが、単純に「あれがきっかけでこの事件がおきた」ということは、あまりないのです。そのような実際の物事の経路を知るには、読書はとても有効ですよ。
 もちろん、読書だけに限ったことではありません。テレビのニュースや新聞からも様々なことがわかります。映画もいいでしょう。みなさんも知っている映画で東北にちなんだものだと、福島県を舞台にフラダンスを主題にした映画がありましたよね。作品としてのおもしろさの他に、日本の成長の軌跡や当時の人々の生活、産業の移り変わりなどが自然とわかってくるのではないでしょうか。

学生とは授業以外でも話をすることはあるのですか?

 とても多いですよ。例えば、「ゼミ」と呼ばれる少人数での演習が大学にはあるのですが、終わってから一緒にお酒を飲みに行ったり、たまには旅行に出かけたりしますよ。今度、宮城県の大崎市にある有名な「あ・ら・伊達な道の駅」に行ってきます。これは半分は小旅行ですが、半分は職員の人から話を聞くなど、まじめな勉強の一環です。
  他にもスポーツをしたり、何百人もいるゼミの卒業生とは「OB・OG会」として定期的に会っていますよ。今度は蔵王で会うことになっています。OBやOGは、250〜300人くらいいると思います。一番年上だと、35〜40歳くらいになっているので長いお付き合いですね。他には顧問をしているクラブやサークルなどの学生とは、授業以外でも接することが多いですね。

学生と接することで、先生はどのような発見がありますか?

大滝先生と高校生

 一つは若い人の生活や感覚などですね。携帯電話の使い方などは学生から教わることもあります。私が大学で教えるようになったのは27歳の時で、その時は24歳の学生がいました。3つしか違わないので、学生というよりも、もうほとんど友達ですよ。よく家に呼んでお酒を飲んでいました。ところが30年近く働いていると、自分では若いつもりでも、どんどん歳をとっているのですね。今55歳なので、新入生として入ってくる18歳や20歳の学生たちは自分の子どものような年代なのです。自分たちの年代だけでは知りえないことやセンスなどを教えてもらっています。ですが、取り巻く周囲の環境は変わっても、大学に入ってきて真剣に学問に取り組む時の目の輝きとか、研究の打ち上げで遊んだりしている姿などは、30年前の学生も今の学生も変わらないですよ。

 もう一つは、同じ経験をしても、私たち教員とは違う感じ方をするのだということです。教員も毎年授業を繰り返していると、だんだん新鮮さがなくなってきてしまうことがあるのです。ところが教員にとってはこれまで教えてきたことでも、学生にとっては初めて勉強することで、大きな発見の連続なのです。「経済がこんな仕組みになっているとは思いもよりませんでした」とか、「目からウロコが落ちました」などと言われると、こちらの方が幸せな気持ちになります。「こちらも頑張らなくては」という気持ちにさせてくれますね。

 あと、発見ではないのですが、毎日学生と接しているので自然と自分自身が若くなりますよ。年齢よりも若く見られることが多いのは、素直に嬉しいですね。

最後に、東北大学の特色と、入学を希望する高校生へメッセージをお聞かせください

 私は長野県で育って、東北大学に入学してから仙台に来たのですが、キャンパスだけではなく、街のいたるところに緑があって、学生が暮らしやすい場所だと思いました。学ぶ環境としては最適だと思います。
 また、10の学部があるので、様々な考えを持った人と交流できることも総合大学ならではの利点だと思います。それぞれのキャンパスが比較的近いことも影響しているでしょう。社会の出来事は文系理系関係なく進んでいますので、一つの学部内で完結することはそう多くはありません。医学部と工学部、経済学部と農学部というように垣根を越えた研究が増えてくるでしょう。そうなると、自分の専門だけにどんどん閉じこもっている人は活躍しにくくなると思います。様々な学部が共通で学ぶ授業やサークル活動などを通じていろいろな人に出会うということは、とても有意義なことですよ。

 最後に東北大学を目指している高校生のみなさんへ。私自身がこの大学で4年間、その後の大学院なども含めると9年もの間、すばらしく充実した学生生活を送ってきました。それは学習環境が整っていることも大きな要因です。教員の数を例にとっても、経済学部では、一学年約280人の学生に対し、60人もの教授や准教授が担当しています。東京の有名私立大学でもなかなかここまでの教員がいることは少ないかと思います。
 みなさんの学習意欲、やる気を教員も全力で応援しますので、ぜひこの大学で一緒に学びましょう。お待ちしています。