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インタビュー
インタビュー vol.1
幸せな人生を送るために今考えることは?

 こちらのページでご紹介した、図解を用いたキャリアデザインについてより知るため、聖ドミニコ学院高等学校の皆さんが宮城大学久恒教授の元へうかがい、将来のために今何をしたらいいのか、また、久恒教授は昔どんな風に考え、その時何を決断してきたのかなど、「キャリア」をテーマにお話をうかがいました。

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高校生が将来のことやキャリアを考える時、どんなことに気を付ければよいでしょうか?

 将来的には、仕事をしているということが大事です。しかしその時にどんな仕事がよいかというのは、なかなかわからないものです。それは、仕事というのはやってみるまでわからないからなんです。仕事の種類全部やってみて、一番向いた仕事を選べるかといったら、そういうことはできませんよね。逆に「これしかできない」というのもおかしなことです。やってみたものをだんだん好きになって、それが自分の天職になっていくこともあるので、どんな仕事がよいのかということをあまり厳密に考えることはないと思っています。

仕事を選ぶときの3つの視点

 仕事を選ぶ際には、三つの視点をもとに考えてはどうでしょうか。一つ目は自分の性格に合った仕事はどういうものなのか、という観点です。これは非常に重要な観点で、性格に合った仕事は非常に楽しく感じます。もう一つは、好きか嫌いで選んでみる。小学校以来ずっと好きな分野や続けている趣味とか、そういうものがあると思います。三つ目は、得意か不得意か、ということです。この三つが重なった、自分の性格に合っていて、好きな分野で、得意なものが一番いいと思います。しかし、三つすべてが重なることはあまりないと思いますので、性格に合っているということと好きな分野であるということを中心に考えてはいかがでしょうか。

久恒先生は高校生のころ、将来何になりたいと考えていたのですか?

 私は大学に行くことは考えていたのですが、どの学部に行くかということは決められませんでした。数学が苦手だから文系に進もうと思っていたくらいだったんです。高校2年生の時に石巻出身の布施辰治さんを描いた「ある弁護士の生涯」という本を読んでとても感銘を受け、弁護士を目指して法学部に入りました。ところが入ってみると、大学には楽しいことがたくさんあるのに何でこんな勉強をしなくちゃいけないんだと嫌になってしまい、弁護士になるのをあきらめました。
  もっと振り返ると、小学校の頃は、アナウンサーになって母に毎日私の顔を見せてやろうと思っていました。中学生の時は、壁新聞で良い賞を取っていたのでジャーナリストになろうと思っていました。そして、高校の時は弁護士。大学に入ってからは、探検部に入ったので、探検家になろうかと思っていました。ところが、探検家になるためには良い成績で大学に残らなければいけかったんです。しかし、探検部で活動をしたせいで成績が悪くなり、やむなく就職をしました。でもそれが悪かったとは思っていません。私は航空会社に入りましたが、もし商社や銀行だったら、また違う人生だったかもしれませんが、どの道を選んでも自分らしく生きていただろうなと思っています。

働くにあたって成績の良し悪しや、頭がいい・悪いというのは重要ですか?

 私は、大学時代は成績が悪かったんです。だから、私の同級生はみんな不思議に思っていますね。「あの成績が悪くてギリギリで卒業したやつが、どうして大学の先生になっているんだ」って。当時私の大学の学部を出た人で、大学の教授になっている人が二人います。一人は成績が一番だった人。もう一人は私で、成績はビリでした。でも同じ教授になっていますね。あれほど勉強したのにどうなっているんだ、と一番だった人は思っているんじゃないかと思います。ただ、社会に出て、私はどこでも一生懸命にやってきたことは間違いありません。
  それと、もう一つ。すごく頭のいい人で失敗を怖がっている人と、頭は悪いけど失敗を恐れない人、どちらが伸びるかといったら、明らかに失敗を恐れない人の方が伸びます。「人生における最大の失敗は、失敗を恐れて何もやらないことである」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。失敗をしてしまうと楽になるし、失敗をしないとわからないことだらけです。だから、どんどん失敗してください。特に若いうちに失敗をした方がいいと思いますよ。40歳過ぎてから失敗したら大変なことになりますから。

高校生のうちにやっておいた方がいいことってありますか?

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 一番大事なことは「幸せな人生を送る」ということだと思います。幸せな人生を送るためにはどうしたらいいかを考えればよいのではないでしょうか。しかし、「自分はどういうものを幸せと感じるか」ということは人によって違いますね。お金があったら幸せな人もいるし、愛情があれば幸せな人もいる。人から偉いといわれたら幸せな人もいるし、一人でいることが幸せな人もいます。それはかなり性格によるものが大きいと感じています。だからこそ、自分をよく知ることが重要なのではないでしょうか。自分はどういう人なのかをいつも考えておくことが重要なんです。今までやってきたことの中にしか自分は存在しません。
  私は、かつて大学1年生の授業で「自分史」を書かせていました。大人は「18歳や19歳に歴史なんてあるわけがない」と笑うんだけれど、実際に書いてみるとすごい歴史がある。だから、自分を振り返って自分史を書くことによって、自分を理解できて自分の進むべき道が分かる人も結構出てくるんですね。こんな風に自分をよく振り返る癖を付けると、自分自身を持つことができますよ。人の流れに流されることなく、自分を持つことができるということですから。

もしも、久恒先生が今、高校の先生になったら、高校生と一緒にやってみたいことはありますか?

 まず、一人一人の個性を伸ばしたいですね。個性とは何かというと、その人が持っている力や可能性のことです。それを引き出すような教育をしたいですね。それが私の望みです。

最後に、久恒先生の考える「キャリア」について教えてください

 私にとっては「今日も生涯の一日なり」。この考え方が表していると思っています。この言葉は福澤諭吉の言葉です。朝起きて、「今日は今日ではなく、自分の生涯というものの中の一日だ」と捉えて、様々なことをやったんですね。だから一人の人間とは思えないような膨大な業績を残しています。私たちは福沢諭吉ほど偉くもないのに、こういう風には暮らしていませんよね。だからこそ、私はこの言葉を発見して大切にしているんです。今日も生涯の一日だと思ってがんばり、明日は何をしようかなと考えます。それが積もり積もっていくとすばらしい生涯になるのではないかなと感じています。高校時代は一度しか来ませんから「いい高校時代を過ごそう」と考えて大切に過ごす。そうしていくことが結果的に幸せな人生になる一つの道だと思っています。誠実に今を一生懸命生きることが、自分にとってすばらしいキャリアになるんだと思いますよ。